「2040年問題」が間近に
2040年頃には「団塊ジュニア世代」が65歳以上となり、高齢化率が過去最大の約35%に達すると推計されています。また、同時に少子化による生産年齢人口の減少が起こることで、医療・介護現場でも今まで以上に人材確保が困難となります。
また厚生労働省の推計では現状と比較すると2040年には約60万人の介護職員数が不足するようです。しかしながら生産年齢人口が2020年から2040年で約17%減少する状況を鑑みると、介護業界全体でみてもそれだけの人材を確保することは困難となります。
生産性向上体制加算の新設
高齢者人口の増加に伴う介護需要の増加、生産年齢人口の減少に伴う介護職員の減少といった外部環境を踏まえ、令和6年度介護報酬改定で新設されたのが「生産性向上推進体制加算」です。
加算(Ⅰ) で 利用者1名あたり100単位/月、加算(Ⅰ) で 利用者1名あたり10単位/月であり、100床規模の施設ではそれぞれ加算(Ⅰ)で120万円、加算(Ⅱ)で12万円の年間収益が見込まれます。
また生産性向上推進体制加算は、介護現場の業務の見直しやICTを活用することで介護職員の間接業務を削減し、直接業務を増やすことで「働きやすい職場」をつくり、介護人材の確保と多業種への流出を防ぐことが目的とされています。
(以下の図は、業務改善の要約となります)
さらに厚生労働省から「生産性向上に資するガイドライン」も明示され、ガイドラインの取り組み手順である、課題の抽出や改善活動のPDCAサイクルの継続的な実施を通じて、2040年以降も安定的に介護を提供できる環境を目指す進め方が示されています。こうしたガイドラインの取り組みを進めることで生産性向上推進体制加算の取得へとつながる仕組みとなっています。
生産性向上推進体制加算の取得を目的とするのではなく、生産性向上推進体制加算の要件やガイドラインを利用し「働きやすい職場」をつくることを目的として取り組むことが、職員の定着や離職の防止、採用促進のカギとなるでしょう。
また、ICTの導入を行う場合は多額の出資が伴うことが多いため、加算収益(上記に概算を記載しております)や補助金の補助率などを考慮しつつ、慎重に検討を進めましょう。